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コールセンターのKPI

コールセンターは一般的にプロフィットセンターではなくコストセンターととらえがちです。その理由の1つとしてコールセンターが生み出すバリューが見える化されていない、つまり数値化されていない事にあります。これは企業のIT部門と同じです。IT部門も一般的にはコストセンターとして扱われますが、最近のIT部門はAIやRPA(Robotic Process Automation)などを利用して積極的に営業支援や経営支援を行う事によってプロフィットセンターとして会社をけん引する部門へと移り変わっています。

コールセンターも適切なKPIを取り入れてバリューを見える化する事によってプロフィットセンターへと移り変わる事ができます。ここでは、コールセンターで利用されるKPIを体系的に紹介します。

コールセンターKPIの体系

コールセンターのKPIは3つに分類されます。

  • 生産性指標(Productivity)
  • 品質指標(Quality)
  • 収益性指標(Profitability)

生産性指標はコールセンターのオペレーターがどのくらい効率的に働いているか、という観点を数値化した指標です。後ほど詳細を紹介しますが、例としてCPH(Call Per Hour)というものがあります。CPHは1時間あたりに対応したコールの数です。つまりCPHが10という事は1時間あたりに10件ものコールに対応した事になります。よって、CPHが7よりも10の方が生産性があると判断できますが、CPHが極端に高い数字となると、1件1件のコールに対しての対応が雑になり、品質が下がる可能性があります。ですので、生産性指標と品質指標を一緒に観察していく必要があります。

品質指標はお客様に対して適切な対応を行ったかを数値化した指標です。品質指標の例として、放棄呼率があります。放棄呼率はお客様のコールに対して、コールセンターのオペレーターに電話がつながる前に切れた割合の事です。つまり、お客様の総コール数が100で、その中でオペレーターにつながる前に切れたコール数が10の場合は放棄呼率は10%(もしくは0.1)となります。一般的にコールセンターは常につながる事が前提ですので、10%の放棄呼率は問題です。電話にでない会社は怪しい企業くらいですよね。それを考えると放棄呼率はできるだけ低い値を目指す必要があります。

収益性指標は、コールセンターが会社の収益にどのくらい貢献しているのかを数値化したものです。品質を良くするために高度な技術を導入して過剰なトレーニングを行ったとしても、コストが膨らんで得た利益を相殺すれば意味がありません。

このようにコールセンターは生産性指標、品質指標、収益性指標の3つの指標をバランスよく管理する事で企業の収益に貢献する事ができます。次にそれぞれの指標について詳しく見ていきましょう。

生産性指標(Productivity)

生産性指標は、オペレータの効率性・生産性をモニターして数値化します。

CPH(Call per Hour)

CPHはオペレータが一時間あたりに対応したコールの数です。よってCPHは以下のように計算します。

CPH =(全オペレータのコール対応総数)/ (全オペレータのコール総時間)

CPH=10というのはコールセンター内で1時間で10件のコールを対応したという意味になります。CPH=10が良いのか悪いのかはコールセンターの業種や扱う商品などによって違ってきますので、CPHを定期的に観察して最適なCPHを目指す事が必要です。またCPHは大きい方が良いです。例えば、CPH=10とCPH=7の場合はCPH=10の方が生産性が高いと言えます。なぜなら、CPH=7の場合はそのコールセンターで1時間に7件のコールしか対応できなかったという事になるからです。

しかしながら、CPHを増やすことだけを考えてはいけません。CPHを増やす事を目標にした場合、オペレータが対応時間を抑えようとして雑な対応を行う事になってしまいます。また、毎月のCPHの平均が10なのに、ある月から急にCPH=20になった場合、お客様がコールを途中で切っている、つまりコールでは解決できないので電話を切っている可能性も考えられるからです。ちなみにこのような事をチェックするには一時対応完了率などのKPIをモニターする事で対応できます。

平均通話時間(Average Talking Time、ATT)

平均通話時間(ATT)は1つのコールにかかった平均の通話時間です。平均通話時間(ATT)は以下のように計算します。

ATT=(全オペレータのコールの通話にかかった総時間)/ (全オペレータのコール対応総数)

平均通話時間(ATT)は大きいよりも小さい方が生産性が高いと言えますが、これもあまり小さい数値を目指そうとすれば品質に影響を与えてしまいますので、平均通話時間(ATT)と品質のバランスが必要となります。

平均後処理時間(After Call Work、ACW)

平均後処理時間(ACW)はお客様のコール後に発生する通話記録の入力やお客様からの依頼の対応にかかる時間を指します。

コールの作業はお客様との通話だけではありません。通話後に通話記録の入力を行ったり、お客様からの指示・依頼を入力したりする「後処理」が発生します。ですので、通話が終了したらすぐに待機しているコールを対応する事はできません。

平均後処理時間(ACW)を計算するには以下の通りに行います。

ACW=(全オペレータが後処理にかかった総時間)/ (全オペレータの総コール数)

この平均後処理時間(ACW)が大きいという事は、通話後の後処理に時間がかかっているという事です。通話後の後処理を減らすことで待機しているコールの対応を早くできる事になりますので、平均後処理時間(ACW)を削減する事が重要になります。平均後処理時間(ACW)を削減する方法として、後処理に行う入力作業を自動化したり入力画面を改善したりすることがあげれれます。

平均処理時間(Average Handling Time、AHT)

平均処理時間(AHT)は1つのコールにかかった時間です。平均通話時間(ATT)と平均後処理時間(ACW)を足した数値となります。

ACW=平均通話時間(ATT)+平均後処理時間(ACW)

もしくは

ACW=(コールの通話にかかった総時間 + 後処理にかかった総時間)/ 全オペレータの総コール数

よって平均処理時間(AHT)を改善するためには、平均通話時間(ATT)と平均後処理時間(ACW)のどいずれかに原因があるかを分析して、その原因を改善すれば良いです。

シュリンケージ(余裕率)

シュリンケージ(余裕率)とは、勤務時間の内、コール対応をしない電話時間外の割合を言います。電話時間外の時間は休憩を行ったり、トレーニングやミーティングなどを行う事に利用します。

電話時間外の時間は収益を生まない時間となってしまいますが、この時間はオペレータにとって非常に重要な時間で電話時間外の時間を適切にとらないと、疲労やモチベーションの低下によってコールに品質に影響がでますので注意が必要です。

シュリンケージをチェックして生産性や品質を管理する、という使い方はあまり行いません。どちらかと言うと、離職率の増加やオペレータのモチベーション低下が見受けられた場合に、シュリンケージ(余裕率)を確認して、オペレータが適度な休憩やトレーニングなどを受けれているのかを確認する事に利用します。上の図でわかると思いますが、シュリンケージ(余裕率)は以下のように計算できます。

シュリンケージ(余裕率)=電話時間外の総時間 / 勤務総時間

稼働率(Utilization)

稼働率(Utilization)はオペレータが稼働している時間(ログイン時間)に対して通話や後処理を行った時間の割合を言います。稼働率は以下のように計算します。

稼働率=(通話時間+後処理時間)/ ログイン時間

稼働率を良くするためには待機時間を減らすなどの策が考えられますが、稼働率が良いからと言って、一概に生産性が高いとは言えません。なぜなら通話や後処理の時間が無駄にかかっていても、稼働率が良く見えてしまうからです。

品質指標(Quality)

品質指標は、コールの応答品質を担保するために数値化する必要のある指標です。

放棄呼率

放棄呼率は顧客コール数の内、オペレータにつながる前に切れたコール数の割合です。放棄呼率は以下のように計算します。

放棄呼率=電話がつながる前に切れたコール数 / 総コール数

総コール数が100件で、そのうち電話がオペレータにつながらなかった件数が5件とすると、放棄呼率は5/100で0.05もしくは5%となります。放棄呼率が大きくなるとお客様からすれば電話につながらないストレスが増加して、ネガティブな評価を受ける事になります。一般的に放棄呼率が大きくなる理由として、平均通話時間や平均後処理時間(つまり平均処理時間)が大きくなってたり、オペレータの数が少ない事が考えられます。

放棄呼率を減らす方法としては、以下の方法が考えられます。

  • 適切な数のオペレータを配置する
  • 自動音声対応システム(IVR)を導入する事によって

 

 

平均応答時間(ASA)

 

一時対応完了率

 

収益性指標(Profitability)

 

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